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「その姿は見えないのですが……。」
「あ、さうでしたな。一つ診ていたゞきませう」
「死んだんですか?」
「おつ!こりあいかん」
今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。
それは正文にかゝりつけの患家だつた。
「さうですよ、ですが、何年ぶりでせう。これがもつと他の所だつたらおたがひ気がつかなかつたかもしれませんよ」
「眼が潰つぶれちまふ――ねえ、先生」
房一は刃物で突く恰好をしてみせた。
房一は鬼倉に向つて叮重ていちように云つた。
「さつき、河原で、先生に会つたんでさあ。――往診に出かけなさる途中でね」
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」
「なに、ろくでもない用事で帰つたもんですから、どこへも失礼していたんです」